モラハラする人の言動にある共通点と傾向

デート相手、元上司、そして自分の親──。過去にモラハラをしてきた人たちの特徴と共通点を探り、その傾向をまとめてみた。

モラハラする人から心を削られないようにするために。そして、自分自身がモラハラする側にまわらないために。
富岡すばる
2021.10.10
誰でも

僕がモラルハラスメントという言葉を初めて聞いたのは、2015年にタレントの三船美佳と、当時の夫との離婚報道が流れた時だった。彼女が離婚の原因に挙げていた理由にモラルハラスメントがあったのを覚えている。

実際に彼女の元夫がそうだったのかどうかについて触れるつもりはないが、モラハラという略称で呼ばれるこの行為が肉体的な暴力は伴わなくとも、暴力的な言葉や態度で相手を支配することだと知った時、そういえば自分の近くにもそういう人がいたなと初めて認識することができた。

かつて働いていた職場の上司が正にこれで、常に不機嫌なオーラを撒き散らして周囲を威圧する人だったのだ。当時は「もしかしたら自分が怒らせてしまったのだろうか」と多少感じるところもあったのだが、モラハラという言葉を知ってからは、あれは一種の暴力だと気付けた。こちらが自責の念を抱く必要などないのだ、と。

そういった意味でもモラハラという概念を知れたのは良かったと思っているが、この時点ではまだモラハラを「暴力的な言葉や態度」という一面でしか理解をしておらず、その本質を知るのはもう少し後になってからだった。

自分の受けた行為がモラハラだったと気付くこと

昨年だったが一昨年だったかは忘れてしまったが、少し前にTwitterで、元パートナーがモラハラ気質の人だったという方の投稿を見かけた。それによると、その方は元パートナーが運転する車に乗った時に寝てしまったことがあるらしいのだが、その際に必ず元パートナーから起こされたのだという。

数あるモラハラエピソードの一つとして語られていた記憶があるが、同じ経験を語っている人が他にもいて非常に驚いた。驚いたというのは、僕も全く同じことをされた経験が過去にあり、なおかつそれがモラハラ行為だとは全く思わないまま長いこと過ごしてきたからだ。

今から十年以上前、僕が20代前半だった頃、毎週のようにデートをする男性がいた。交際しようという約束は特にしておらず正式に付き合っていたわけでもないのだが、お互いに好意はあったし、恋人に近い関係だった。いつも会う時は彼の運転する車で移動し、僕は助手席に座っていた。

その際、移動中に心地よくなって、ついうとうとしてしまったことが何度かある。すると、毎回必ず起こされた。とは言っても不機嫌になって怒ってくるようなことはなく、突然大きな声で歌い出すとか、どこか冗談めかして起こしてくることがほとんどだったので、僕も「ごめん寝ちゃった!」という感じですぐに起きた。

だからこの件に関してのみ言えば、彼にそこまでの悪感情はない。僕自身、ちょっと寝過ぎだったかもしれないという思いも少なからずある。

罪悪感を抱かせてくるハラスメント

ただ問題なのは、Twitterで見た人と同じように、これ以外にも小さなエピソードがいくつもあるということなのだ。それらは単体で見ると、確かに自分にもちょっと至らない点があったと感じさせる場合もある。ただ、その一つ一つを繋いでいくと、そこに見えてくるのは「モラハラ」という支配そのものなのである。

彼の場合、車内で起こしてくること以外にも、こんなエピソードがあった。

①人の進路や人生プランにダメ出しをしてくる

②もう少し体を鍛えた方がいいなどと言って体型にケチをつけてくる

③喧嘩をするとプレゼントを返せと言ってくる

④気分が乗らずセックスを断ると隣で自慰行為を始める

これらに共通しているのは、こちらに罪悪感を抱かせてくるという点である。①と②に関しては余計なお世話でしかないし、③に関しては発想が稚拙だし、④に関しては同性であっても理解ができないし、気持ちが悪い。しかし、深い関係になっている相手からこういうことをされると、ついこちらが悪いことをしたような気分になってしまう。「ちゃんとセックスの相手をしてあげれば横でこんな風にオナニーさせなくても済むのかな」と、一瞬でも思ってしまったのを覚えている。

相手に罪悪感を植え付けるというのは、洗脳の第一歩だ。車の運転中に起こされるエピソードなどは人によって些細なものに見えるかもしれないし、僕自身も大したことではないとずっと考えていたが、そういう小さなエピソードがいくつも積み重なっていけば、やがて自信や自尊心は奪われていく。

「ちゃんとセックスの相手をしてあげれば横でこんな風にオナニーさせなくても済むのかな」が、「申し訳ないからセックスさせてあげなくちゃ」に変わっていくまでにそう長い時間はかからない。しかも、こうしてじわじわと首を絞めてくるので、自分が受けているモラハラをモラハラとして即座に認識するのは時に難しい。僕も彼がモラハラ男だったと気付いたのは、彼と会わなくなって10年近く経ってからのことなのだ。

だからこそ、やけに恩着せがましいことを言ってきたり、こちらの非をつつきたがる人がいたら、早めに距離を取りたい。ただここで注意しなければいけないのは、モラハラ気質の人は必ずしもいつも支配的だというわけではなく、場合によっては真逆の態度を取ってくるということ。

「優しさ」や「やわらかい態度」の裏にあるもの

例えばこの彼も、会う前から「セックスしたい」といった連絡をしてきて、もう僕は関係が終わってもいいやという気持ちで「セックスしたいだけなら今日は会わない」と返し、しばらく放置したことがある。そうしたら、「車で送り迎えもするしドライブだけでもいいから会いたいな」と、妙に優しいメールを送ってきていた(その日は結局会ったのだが、確かにドライブとご飯だけで終わった)。

また冒頭で例に挙げた元上司は、普段は自身がイライラした空気を放っているくせに、こちらが怒りの空気を出すと、逆にご機嫌取りをしてきた。僕が上司に対して直接怒ったわけではないのだが、後輩がミスをやらかしたので注意をしていたら、後から上司が「怖い~」などと茶化しつつ僕にジュースを買ってきたのだ。

自分が場をピリピリさせるのは良くても、ピリピリしている(ように見える)場に自分が置かれることには拒否感を示すのだ。

あと僕の父も少々モラハラ気質な人で、母に対して支配的な言動を取る場面を何度か見たことがあるが、その度に母から倍返しされては「はい俺が悪かったです」と意気消沈していた。後に父が家から出ていったのは、母が決して黙ったりせずに言い返す人だったからであり、もし彼女がモラハラに耐え忍ぶ人だったら父は家に留まったのではないかと思っている。

またこれは全員に当てはまるわけではないが、どこかに出かけたりご飯に行ったりする際、相手に行き先や場所を決めさせる傾向があるという点も記しておきたい。これが付き合いたての恋人だったりすると、こちらの行きたい場所に連れていってくれる優しい人に見え、自分が尊重されているかのような気分になるのだが、要は責任の在処をこちらに押し付ける手法なのだ。

一見何でも要望を聞いてくれるように見せかけて、あとからこちらのやり方にケチをつけたり、マウンティングしたりする場合も少なくないので、やたらと意思決定を委ねてきたがる人には注意を払いたい。ちなみにこれは日常会話の中でも見られる傾向で、例えばこちらの質問に対して「君はどう思うの?」などと質問で返してくる人も、同様の意図を持っていることが多いので要注意である。

パワーゲームでの「勝利」

と、ここまでは、日頃からモラハラ気質が言動ににじみ出ている人の特徴を紹介したが、このような素振りを普段は全く見せない人もいる。ではそういう人はどこでモラハラスイッチが入るのかというと、明確に相手との関係性が変わった時だ。

これは20代前半に僕がアルバイトとして働いていた職場での話だが、僕と同じようにアルバイトとして働いていた同僚が正社員になった瞬間、上司がその人のことを苗字で呼び捨てするようになったことがある。それまでは田中君(仮)と呼んでいたのに、急に田中と呼ぶように。僕も上司から正社員にならないかと誘われていたのだが、その意味不明な急変ぶりに怖くなり、断固拒否した。

だから、結婚した瞬間にパートナーがモラハラ行動を取るようになったという人の話を聞くと、あぁこれと似たパターンだなと思う。それまでは客人として扱っていたのに、相手が部下や配偶者になった途端、「自分のもの」として扱う。それは本性を現したというよりも、むしろ「こういう上下関係なのだから当然だろう」という合理性に従った結果であり、その思考を事前に察知するのは至難の業だ。

そういう人に対しては自分への態度や言動からモラハラ気質をチェックするのではなく、相手の親や(特に母親)、飲食店等の店員に対する態度などから確かめるのが最適だろう。それでも、外では徹底して優しい態度を貫く人もいるのでなかなか見抜けないこともあるが、社会的弱者に対してどう考えているかを聞くと、すぐにボロを出すパターンもある。

そもそもハラスメントというもの自体が相互の力関係に依るところが大きいので、ハラスメントをする人は、より大きなパワーを持った人が正義であるかのような価値観に囚われがちだ。僕が見てきたモラハラ人間たちが、いずれも相手から反撃されると大人しくなる傾向があったのも、これと関係しているだろう。だから例えばシングルマザーの貧困問題だとか、社会的に力を得やすい成人男性とは同じ土台に立てない人たちがいるという事実に、彼らは驚くほど冷たい。自分は頑張った分だけ成果を出したのだから他の人もそうであるに違いないという、強者の理屈を振りかざすような人は、モラハラのみならずパワハラなども起こす可能性が高いと見て間違いないと思う。

また、この記事で男性のモラハラ加害者を多く取り上げたのは、僕の出会った加害者には男性が多かったからで、それは男性の方が社会的にパワーを手にしやすいという側面が影響しているだろう。だから、女性がモラハラ加害者になるパターンも当然ある。実は冒頭に取り上げたモラハラ上司は、同じ会社に務めていた女性と職場結婚しているのだが、その彼女もまた部下に対してはモラハラ気質を見せる人だったのだ。だから二人が結婚すると聞いた時、似た者同士がくっついたねぇ、と周りはみんな冷ややかな目で見ていた。

なお、職場では妻の方がポジションが上だったが、結婚後は夫の方がモラハラ度を強め、妻がそれに堪えるという構図になったようだ。ここにもまたハラスメントに潜むパワーゲーム性が垣間見えるように思えて仕方がない。

僕自身の加害性について

僕は普段ニュースレターやTwitterで、同性愛者というマイノリティとしての視点から綴った記事やつぶやきを発信している。同じマイノリティの人に届いたら嬉しいという気持ちと、差別をなくしたいという思いが根底にあるからだ。と同時に、自分がマジョリティの立場になった時、自分がされてきたことを他者にしてしまわないようにしようという自戒も込めている。

今回書いたこの記事も同様で、自分が力を得た時、いとも簡単にハラスメントをする側にまわる可能性は否定できない。現にあれだけ頻繁にデートでモラハラをされながらも、そこまで大きな傷を負うこともなく彼との関係を終わらせられたのは、当時の僕が整形直後で自意識過剰になっており、彼からなんやかんや言われても「この人は僕のことが好きで、僕に振り回されているのだろう」とどこかで見下していたからに他ならない。

つまり僕自身も彼との関係において、「自分の方が惚れられている」という考えに優越感を抱き、その点においては圧倒的なパワーを感じていた。だから彼がモラハラ人間だったと気付くことは、そのまま僕もまたモラハラの素質を充分に持っていたと気付かされることでもあり、そう考えると、そのどちらにも無自覚なまま生きていた間の自分自身がとても怖くなる。

このニュースレターが他者のモラルハラスメント度を推し測る役割を果たすものになればと考えると同時に、自分を常に振り返るための場になればとも思い、ここに記す。

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